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ハンジ(韓紙)工芸Lecture

韓紙工芸の歴史や伝統模様のお話、作品づくりのこと等、韓紙工芸をもっと楽しむヒントをご紹介します。

韓紙工芸のいろいろHanji Kougei

韓紙と韓紙工芸丈夫な韓紙の特性を活かす先人の知恵

古の書物をモチーフにした古書韓紙

韓紙(ハンジ)とは、楮(こうぞ)を原料に、韓国独特の技法で作られた手漉き紙のことです。

三国時代(紀元前一から紀元後七世紀頃/日本では弥生・飛鳥・奈良時代頃)に生産されていたといわれるほどに古い歴史があり、「紙は千年、絹は五百年」という言葉があるくらい、丈夫な紙として伝わってきました。

書物としてはもちろんですが、韓紙には保温や防虫の効果があり、そんな特性から障子や壁、床に貼る紙など、インテリアにも取り入れられていたそうです。また、韓紙を使って様々な生活雑貨が作られており、それらは「韓紙工芸」と呼ばれています。韓紙工芸は箱などの小物から、机、鏡台、箪笥などの家具にまでいたります。

当時、韓紙は貴重なものでした。 その時代に同じように貴重品だった 布を大切に再利用するために、韓服のハギレを縫い繋げて「ポジャギ」と呼ば れる風呂敷が作られていた文化が韓国にはありますが、同じように、韓紙を再 利用したり、丈夫な特性を活かして生活の必需品が作られていたのが韓紙工芸・・韓紙工芸やポジャギは、古の生活の中で育まれた知恵から生まれた文化といえ るでしょう。

韓紙工芸が盛んに作られていたのは、朝鮮時代(十三〜十八世紀頃/日本では室町・安土桃山・江戸・明治時代)と言われています。

韓紙工芸には様々な種類がありますが、中でも代表的なのは、紙縒りをカゴのように編む「紙繩(チスン)工芸」、重ねた韓紙に漆を塗る「紙戶(チホ)工芸」、小刀で伝統模様の装飾を施す「剪紙(チョンジ)工芸」の手法です。

ただ現在では、紙繩工芸や紙戶工芸は韓国でも習える場所は少なく、韓紙工芸といえば剪紙工芸が、身近にハンドメイドを楽しめる韓紙工芸として主になっています。

色とデザインを楽しむ剪紙工芸繊細な切り絵と美しい色の世界

剪紙工芸のいろいろ

剪紙工芸といえば、その大きな特徴は、繊細で美しい切り絵と色あわせ。 小刀で切り抜いた伝統模様を、好みの差し色で装飾(배접 / 褙接)し、作品を彩ります。

そんな剪紙工芸の魅力を、作る視点から語るならば、やはり何より色合わせとデザインを楽しみながら、美しく、そして実用的な雑貨を作れること。 自分の使いたいもの、身近な生活の必需品を、優しい風合いをもつ自然素材の韓紙で彩っていく、穏やかな時間・・

剪紙工芸のいろいろ

もともと、庶民の女性達の手仕事として韓紙工芸はあったそうです。

縁起をかつぐ伝統模様で生活雑貨を装飾した文化の背景には、家族の幸せを願う心と共に、古の女性達の美しいものに憧れる気持ちも深く込められていたことでしょう。

色合わせといっても、当時は韓紙の染色も自然素材から。模様を切り抜く小刀も身近ではなかったはず。それでも、受け継がれ発展してきたその魅力。

技術が発達し、伝統模様のデザインもパソコンでできれば、選びきれないほどに色とりどりの韓紙が揃っている現代。剪紙工芸という文化のそんな背景を大切に心に留めつつ、今のそれぞれの暮らし方にあったスタイルで、色とデザインを楽しみながら、韓紙を身近に、生活の中に取り入れた暮らしも素敵なことだと思います。

見直されるその魅力暮らしの中の韓紙工芸のかたち

華やかな草花模様の模様韓紙

韓紙工芸は、伝統工芸でありつつも、本場韓国では今もとても人気のあるハンドメイドのひとつ。

趣味として本格的に楽しむ方ももちろんですが、学校や介護施設等で体験教室が開催されるなど、子供からご高齢の方まで年齢を問わず楽しめる身近なハンドメイドとして存在しています。

優しい風合いをもつ韓紙で作られた雑貨たちは、使う度にどこか懐かしい癒しをくれます。お洒落でインテリア性も高く、エコで自然素材の魅力に溢れる韓紙工芸。切り絵を通してささやかに込める幸せを願う心。

そんな魅力が見直され、伝統的な形の箱や小家具以外にも、CD棚やワインラック、電話台、ランプなど、現代の生活スタイルにあう作品が多々見られるようになり、今の暮らしの中にも馴染んでいるようです。

古色韓紙工芸

また、最近韓国で人気なのが、韓紙を漂白剤で脱色してわざとアンティーク風に見せる「古色韓紙工芸」とよばれる脱色の技法を用いた作品です。

例えば、古くなった家具に黒韓紙を貼り、おおってみます。その黒韓紙に包まれた家具の表面を、漂白剤を染ませたタオルでなぞると、黒韓紙の色が少しずつ落ちていき、アンティークのような風合いがでるんです。

土台になる古家具に、厚紙や紙粘土で伝統模様を施した上から黒韓紙でおおうと、模様が浮きあがり、なおさら立派なアンティーク風の家具に大変身!

特別な材料がなくても、韓紙の特性を活かせば、古くなった家具や雑貨がお洒落にリサイクルできるだなんて、素敵なアイデアだと思います。ぜひ暮らしに取り入れていきたいですね。

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伝統紋様のいろいろTraditional Patterns

韓紙工芸といえば、その魅力のひとつは伝統紋様のアレンジ。
昔から、縁起の良い伝統紋様に幸せを願う心をこめて、様々な美しい装飾がなされてきました。

こちらでは、韓紙工芸によく使われる伝統紋様や、そこに込められた意味をご紹介いたします。
皆さまの心をこめた作品づくりのご参考に・・(*^-^*)

十長生

十長生とは『 太陽、雲、山、石、水、松、不老草、鶴、鹿、亀 』という自然界の十のものをさします。
これらは不老長生の象徴といわれており、様々な工芸品の装飾に見ることができます。

「十」の「│」は南北を、「─」は東西を表すことから、四方中央の全てを備えており、また、全ての数字が含まれた「十」という数字は完全を意味しているとも言われます。

幾何・漢字

寿命貴福を願う吉兆語紋、福、寿、囍、富、康、寧、貴などの縁起の良い漢字や、それらをモチーフにした紋様、また、亜、卍、回、八卦、太極、亀甲などを象徴する幾何学紋様は、韓紙工芸の装飾によく使われます。

花草・果実

*四君子(梅、蘭、菊、竹)
冬の寒さに耐え早春の雪の中美しい花を咲かせる梅、気品高く香る蘭、幹の中が空いているにもかかわらず強く真っ直ぐで一年中青々しい竹、晩秋の寒さの中潤沢で豪快な花を咲かせる菊。四種それぞれのもつ特性が君子のもつ特性に似ていることから、草木の君子として好まれてきました。
*蓮 泥の中でも美しい花を咲かせることから強い生命力や繁栄の象徴
*牡丹 繁栄を意味し、美しさと幸福の象徴
*宝相華 唐草模様のひとつで、様々な花の良いところを組み合わせた空想上の花
*唐草 蔓草が絡み合う模様で、強い生命力で伸びていくことから繁栄・長寿の意味をもつ
*葡萄 蔓草に果実が連なる姿から、多産、多福、多富を意味し、瓢箪や真桑瓜も同じ意味で使われる
*桃 壽桃ともよばれ多産や不老長生を意味する
*石榴 実の中に種がたくさんあることから百子榴ともよばれ、多産や子孫繁栄を意味する

生物

*蝶 夫婦愛や喜び、幸せの象徴
*蝙蝠 「蝙」が「福」と同じ発音であることから幸福の象徴といわれ、二匹の蝙蝠の模様は双福、五匹は五福(人生の五つの幸福。寿命の長いこと・財力の豊かなこと・無病息災であること・徳を好むこと・天命を全うすること)を意味する
*魚 双を成して使われることが多く、双魚は調和・夫婦和合を象徴する
*亀 呪術的な効能をもつ心霊的な存在として崇められ、その生命の長さから永年不死の象徴でもある
*虎 災いを煽ってくる暴悪な猛獣として警戒の対象である傍ら、時には人間の側に寄添い邪気を追い払ってくれる霊物で、善悪の審判官
*鹿 群を成して生活し、移動する度に落伍者がいないかを探る姿から友愛の象徴とされる
*鴨 ついの一匹が死んだら後を追うようにもう一匹も死んでしまうとして、夫婦和合や幸福を象徴する
*鶴 飛鳥の頭目として雲と共に描かれ、吉兆や長寿を意味する
*鵲 昔から良い知らせを届けてくれる喜鵲として愛されている
*龍 超越的な能力と力をもつ想像上の動物で、祥端を象徴する
*鳳凰 鳳はオス、凰はメスをさす。龍と鶴が雲の中で恋愛し鳳凰が生まれたという伝説をもつ想像上の吉鳥

五方色

五方色とは、「青・白・赤・黒・黄」の五色をさし、"陰陽の気が木、金、土、火、水の五行を生成した"といわれる陰陽五行思想に基づいて、方位・意味・季節・味・五感・五臓等と関係するとされています。

また、韓服の袖などに良く使われる색동(セットン)と呼ばれる縞模様にも五方色が取り入れられることがありますが、もともと색동(セットン)には色々な色を身につけることで厄除けや無病息災への祈りが込められていると言われています。


【五方色(五方正色)】
青(東 / 木 / 春 / 仁 / 喜び / 酸味 / 肝臓 / 目 )万物が生成される春の色
白(西 / 金 / 秋 / 義 / 憤怒 / 辛味 / 肺臓 / 鼻 )真実、命を意味する色
赤(南 / 火 / 夏 / 禮 / 楽しみ / 苦味 / 心臓 / 血 )強く邪気を退ける色
黒(北 / 水 / 冬 / 智 / 悲しみ / 塩味 / 腎臓 / 耳 )人間の知恵を司る色
黄(中央 / 土 / 四季 / 信 / 欲心 / 甘味 / 脾臓 / 体 )最も高貴な色

【五間色(五方雑色)】
緑(黄と青の間色)
碧(青と白の間色)
紅(白と赤の間色)
紫(赤と黒の間色)
硫黄(黒と黄の間色)

参考文献:「전통한지공예」「민화속의 문양이야기」「한지문양」

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作ってみよう!韓紙工芸Do It Yourself

準備するもの韓紙工芸に必要な道具達 / 道具選びのポイント


カッター

カッティングマット

強力ボンド

瞬間接着剤

0.3mmシャーペン、定規

分度器、コンパス
【カッター】
骨格や韓紙の裁断に使用 / 太すぎず握りやすくて、適度な重みのある金属製が使いやすい

【カッティングマット】
骨格や韓紙裁断時のテーブルの保護に / 骨格や韓紙の裁断用には大きめのサイズ、切り絵模様の切り抜き用には刃なじみが良くやわらかめの素材のものが作業しやすい

【強力ボンド、瞬間接着剤】
骨格の組み立てに使用 / 接着部位により使い分けると便利

【0.3mmシャーペン、定規】
骨格や韓紙の裁断や印し付けに使用 / 定規は重みのある金属製 / シャーペンは0.3mmの細芯だとより正確に製図しやすい

【分度器、コンパス】
骨格や韓紙の製図に使用する
刷毛

澱粉糊

木工用ボンド

ヘラ

濡れ布巾

紙コップ、小皿

空き瓶、タッパ
【刷毛】
韓紙に糊を塗る時に使用 / 幅3cm程度が使いやすい / 毛が抜け難く、洗う時に糊やニスが落ちやすい素材を選ぶ

【澱粉糊】
厚紙の骨格に韓紙を貼る時に使用 / 障子糊、壁紙糊等、粘着力のあるものを選ぶ / 小麦粉など澱粉を煮詰めて作るのも良い

【木工用ボンド】
布紙を作る時や、澱粉糊の粘着力が弱い場合に混ぜる / 組み紐飾り等、小物パーツの接着にも使用

【ヘラ】
韓紙を貼る時に、余分な糊や空気を抜くために使う / 幅広と幅狭の二種類を用意して使い分ける

【濡れ布巾】
手につく糊を拭く / 韓紙を貼りながら、紙がうく時に濡れ布巾で軽く押さえたり、仕上げの水糊を塗る時に敷く

【紙コップ、小皿】
澱粉糊に色韓紙の繊維が入ることがあるので、糊は紙コップや小皿に少しずつ小分けにして使うと良い

【空き瓶、タッパ】
韓紙を貼る澱粉糊の保管用

精密ハサミ/糸切バサミ

デザインカッター/替刃

ピンセット

【精密ハサミ/糸切バサミ】
韓紙を貼る時の細部の処理や、模様のべジョブ(差し色)用韓紙の裁断に使用する / 小さなハサミ型で先の尖ったものが使いやすい

【デザインカッター/替刃】
切り絵模様を切り抜く時に使用する / 刃は頻繁に変えると切り抜きやすい

【ピンセット】
模様のべジョブや韓紙の貼り付け、修正にも便利 / 先が薄く平らになったものが使いやすい
ホッチキス

ハンマー

ハトメ抜き

【ホッチキス】
模様の図案と韓紙を固定する

【ハンマー】
図案と韓紙を固定したホッチキスは、裏からハンマーで叩いて平らにすると切抜きやすい

【ハトメ抜き】
小さな円の切り抜きに使用する
ワゴン棚

ニス
【ワゴン棚】
作品が乾くまでの間干しておく / ザルやオーブンの網で代用可 / \100ショップやホームセンターで「シンク下整理棚」などの名前で手に入る

【ニス】
完成した韓紙工芸品の保護にお好みでニスを使用します
光沢あり・光沢なし、水性・油性など…(光沢なしを塗る場合は、一度光沢ありを塗って乾かしてから)
シミが出る場合があるので、目立たないところで試し塗りすると良い
落款

紋様集
【落款】
趣のある落款で、オリジナルの印をつけたいですね(*^^*)
消しゴムはんこや落款キットなどを使って自分で作るのもよし、また韓国の仁寺洞にいけば、韓国らしいお洒落な落款を作ってもらえる場所がいくつかあります

【紋様集】
様々な伝統模様が掲載されている韓紙工芸用の紋様集も出版されています
そのような書籍も活用しながら、作品にオリジナリティを出していきましょう
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作品づくりのコツ集Tips

作品づくりのコツ「こういうところどうしたらいいの?」にお答えします

剪紙工芸のいろいろ









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